インプラント

インプラントとは、虫歯や歯周病、外傷などで歯を失った際に、顎の骨に埋め込む人工の歯根のことを指します。失った歯をそのままにしておくと、隣接する歯が傾いたり噛み合わせが悪化するため、早めの治療が必要です。従来の治療法としては、ブリッジや義歯（入れ歯）が一般的でした。しかし、ブリッジは失った歯の両隣を削って固定するため、健康な歯を削るデメリットがあり、結果的にその歯の寿命が短くなる可能性があります。一方、義歯は硬いものを噛む際に痛みを感じる場合があり、動きやすく、快適さに欠けることがあります。また、多くの歯が抜けた場合、義歯を支える歯に過度な負担がかかり、さらに歯の健康状態が悪化する可能性もあります。インプラント治療はこれらの課題を解決し、自然な噛み心地と見た目を提供します。

インプラントに使用される金属は、身体に悪影響を与えない（為害作用がない）こと、細胞と結合する（生体親和性）があること、さびない・磨耗しない（耐蝕性・耐摩耗性）といった条件を満たす必要があります。その中で、チタンは最適な金属とされています。理由の一つは、「酸化膜」の存在です。チタンの表面には自然に酸化膜が形成され、この膜が金属イオンの溶出を防ぎ、アレルギー反応を起こしにくくします。二つ目は、軽くて硬いという特性です。小さな部品でも体内に埋め込むものは、軽量で体への負担が少なく、さらに咬む力に耐える強度が必要です。インプラント治療でチタンが使われ始めたのは偶然の発見がきっかけでしたが、これらの特性により、現在でもチタンは最善の材料とされ、多くの治療に活用されています。

インプラント治療は、成功率の高い治療法とされています。近年の技術や材料の進歩により、インプラントの10年後の機能維持率は約95%となり、非常に信頼性が高くなっています。しかし、インプラントの長期的な成功には、患者さんの適切な口腔ケアが欠かせません。インプラントを長持ちさせるためには、治療後の定期的なメンテナンスが必要です。特に、歯科医院での定期検診やクリーニング、必要な場合の調整が重要です。これにより、インプラントの周囲に問題が発生しないように予防することができます。万が一、インプラントの状態が悪化した場合は、除去が必要になることがあります。インプラント除去は自然歯を抜くのと同じような処置で、除去後に骨が回復すれば、再度インプラント治療を行うことが可能です。ただし、骨吸収が進んでしまった場合、再治療が難しくなることもあります。